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米税関がユニクロ製シャツの輸入を差し止めていたことが分かりました。中国・ウイグル自治区の強制労働をめぐる禁止措置に違反していたためとのことです。

ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正社長兼会長は4月の会見でウイグル綿の使用の有無について明言を避けていましたが、米国は禁止措置違反とみなしました。19日、ファーストリテイリングの株価は3%程度の下落を見せました。

ここで思い出されるのが1987年に発覚した東芝機械事件です。東芝機械は1982-84年に、偽りの輸出許可を作成して高性能の工作機械をソビエト連邦(現ロシア)に輸出していました。

その機械の輸出は対共産圏輸出統制委員会(ココム)違反とされていました。その機械を用いれば、ソ連の潜水艦のスクリュー音が低減され、当時ソ連と軍拡競争を展開していた米国にとっては非常に不利になるというものでした。

事件発覚後、東芝機械とその幹部社員は起訴され、東芝機械の親会社である東芝の会長が辞職するという事態に至りました。

当時、この事件のショックはかなり大きかったと記憶しているのですが、発覚から30年以上が経過して、財界内ではその記憶も風化してしまったようです。

今回のユニクロ事件では、米国の厳しい対中国姿勢があらためて浮き彫りになりました。もう一つ強く感じたのが、同盟国である米国の意向を、相も変わらず正確に認識できなかった日本の体たらくです。

なぜ認識できないのかですが「米国の忠実な同盟国である日本に対して米国が強い仕打ちをするはずがない」という甘えがあると感じます。

東芝事件当時の日本は、米国よりもむしろソ連を恐れていました。ソ連は怒らせると本当に実力行使に出るが、米国はそれほどではない-という勘違いがあったと思います。

今回も同様で、怒らせると怖いのは米国ではなく中国-という認識が政財界に根強くあると感じます。中国の意向には敏感ですが、その分、米国の意向については鈍感になっているようです。

また政財界に「ビジネスはビジネス、政治とは別」として、人権問題を軽視する傾向があるとも感じます。1989年の天安門事件の惨劇の後に、西側諸国で一番はじめに中国を助けたのは日本でした。そのうえ1992年には、天皇陛下の訪中という桁外れの好待遇を中国に与えてしまいました。

天安門事件からしばらく時間が経過して「ほとぼりが冷めた」という認識とともに「政治と経済は別」と考えて、飽くまで利益を追求したがる強い傾向がうかがわれます。

また日本人の英語の苦手さも、米国の意向を正確に読めない一要因になっていると感じます。

私が新入社員だった1980年代前半は「これからは英語だ」と企業が社員の英語教育に非常に熱心だったのですが、あれから40年経った今でも日本人の英語下手は克服されておらず、英会話学校は相変わらず隆盛を極めていいます。まあ諸所の事情があって仕方の無いことかもしれませんが-。

今後の展開ですが、米国の厳しい姿勢はユニクロだけに留まらず、他の日本企業や政治家にも波及してくると覚悟する必要があります。

上で指摘したような要因に加えて、安倍晋三前総理に比べると、数段見劣りする菅義偉総理の外交センスも心配です。

また米国の現政権が民主党であることも気がかりです。伝統的に言って共和党はプラグマティズムの傾向が強いのですが、民主党の政権は人権を重視する傾向が非常に強いためです。

その代表例が1980年まで4年間政権を担当したカーター大統領です。カーター氏は当時の韓国の朴正熙大統領の軍政、そして人権抑圧を非常に懸念し、韓国からの米軍撤退さえも考えました。

当時の韓国は共産主義の北朝鮮に対する最前線、防波堤として国際戦略上非常に重要と考えられていました。そのため、カーター氏の米軍撤退論はかなり突出した極論として受け止められたものです。

バイデン大統領はこうした伝統を持つ民主党の出身ですので、違反した日本企業に対して容赦なく厳しい措置を取りそうなことは容易に想像できます。

また政界も無事では済まないかもしれません。思い出されるのは1976年のロッキード事件です、総理経験者だった当時の田中角栄氏がロッキード社の旅客機の売り込みを助けるべく、多額の賄賂を受け取っていたと言われる事件です。

事件そのものは、裁判中の1993年に角栄氏が亡くなったために審理打ち切りとなりました。

なぜ角栄氏を米国が狙い撃ちにしたのかについては、角栄氏の米国からの独立志向があったと言われています。角栄氏は総理の座にあった時に、戦略物資である石油の輸入に関して、欧米のメジャーとかセブンシスターズと言われる巨大石油会社を通さずに、独自の輸入ルートの開拓を模索していたと言われています。

今考えれば、米国の呪縛からの独立は非常に結構なことであり、石油の安定供給に対する角栄氏の慧眼に驚かされるばかりです。しかし当時はまだ機が熟していなかったということなのでしょう。

政治家でターゲットになりそうなのは自民党の二階俊博幹事長であり、自民党と連立を組む公明党などの親中勢力です。

中国など外国勢力による日本の土地取得を規制するための土地規制法案が事実上骨抜きになった裏に親中派の暗躍があったことは広く知られるところです。

自民党が河井案里氏に1.5億円を提供した問題で、二階氏に疑惑の目が向けられていますが、米国の影が無いとは言い切れません。今後、政財界は急速に対米警戒モードに入っていくのではないでしょうか。


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