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GW直前に発表された3月分の鉱工業生産は、生産指数が97.7(2015年=100.0)と、前月比2.2%の増加となりました。

下のCxのグラフで、ラインが下向きの時が景気後退期、上向きの時が拡張期にあたります。「景気は現在どういう状況にあるのか?」を手っ取り早く知りたい人には非常に便利な統計で、日銀短観とともに日銀が景気一致指標として最も注目している統計です。

赤い部分は景気後退期にあたります(2018年11月から2020年5月にかけての時期は市場で一般的に言われている後退期で、まだ公式に認定されたものではありません)。

以前もご紹介したように生産統計は景気の方向感が最もはっきり「見える」指標です。この動きが下向きか・上向きかで、景気の方向感が分かります。3月生産までを示した下のグラフ(Cx参照)を見ても分かりますが、生産の山と谷が、景気の山谷とほぼ一致しています。

このグラフをみると、今回のコロナショックの景気・生産への悪影響は東日本大震災を上回るものの、リーマンショックほど大きくはないということが分かります。

上のCxのグラフの2013年以後の部分を拡大したのがC2のグラフです。昨年春のコロナ禍の蔓延、そして5月いっぱい続いた第一次緊急事態宣言の影響で、生産は昨年5月に急落しました。その後も緊急事態宣言はありましたが、生産は持ち直しているのが分かります。

一方、在庫は昨年5月以後、急落しています。在庫指数は今年2月、3月と94台(2015年=100.0)に落ち込んでいます。何と2011年4月の92.8以来の低水準となります。

在庫の急落については、半導体不足で自動車が作れない-などの要因が影響していると考えられます(この点は今後改めて考察したいと思います)。

このように生産指数が改善しているので、景気も持ち直している状況と言って差し支えないでしょう。

生産(景気)の今後ですが、しばらくは改善傾向が続くとみられます。というのは、在庫が適正な水準を大きく下回っているためです。

やや専門的になりますが、生産在庫率(算出方法とラフな定義は下の※参照)を見ると、3月のそれはプラス14.1ポイントと、ほぼ8年ぶりの高い水準にあることが分かります(C3参照)。

下で示した生産在庫率の定義によれば、3月時点の生産活動は「予期せぬ在庫減局面」にあることが分かります。

つまり、企業は想定外の在庫減に直面しており、在庫水準を適正レベルに戻すために今後生産をさらに増やすと考えられます。生産押上げ圧力が強い状態とも言えます。

このように「景気は持ち直している」と言うと、意外に思われる方が多いと思います。確かに、数次の緊急事態宣言で飲食店、宿泊、小売店などが散々な損害を被っているという昨今のニュースとはかけ離れています。

これまで見てきたのは、日本経済全体、そして製造業については好調ということであり、飲食店などの非製造業の動向をみると、また違った状況が見えてきます。

四半期に一度、日銀から発表される大企業の製造業、非製造業の業況(DI)の推移を示したのが下のC5です。これも数次が高くなれば改善、低くなれば悪化とみて差し支えありません。

製造業、非製造業ともに昨年6月に、ここ最近の最低を記録しましたが、その後回復しています(黄色の点線で囲った部分)。

製造業については、今年6月のDIはプラス5となり、昨年6月のマイナス34から39ポイントも改善しており、好調ぶりが分かります。

一方、非製造業DIは6月はマイナス1となり、依然マイナス圏に留まるばかりか、昨年6月(マイナス17)からの改善幅も16ポイントと、製造業の半分以下にとどまっています。今回のコロナ禍、そして緊急事態宣言が非製造業を直撃していることが見て取れます。

特に宿泊・飲食サービス業の今年3月のDIはマイナス81となり、非製造業全体のマイナス1と比べても圧倒的に低く、状況の苦しさが察せられます。

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※生産在庫率は「<生産の前年比変化率>マイナス<在庫の前年比変化率>」(生産、在庫はともに原数値)で計算できます。3月の生産は前年比プラス4.0%、在庫はマイナス10.1%ですから、3月の生産在庫率は、⁺4.0マイナス(マイナス10.1)でプラス14.1ポイントとなります。
在庫状況には4つの局面がありますが、生産在庫率によって以下の判断が目安になります。
1.「予期せざる在庫積み上がり局面」:生産在庫率がゼロからマイナス幅最大まで
2.「在庫調整局面」:生産在庫率がマイナス幅最大からゼロまで
3.「予期せざる在庫減少局面」:生産在庫率がゼロからプラス幅最大まで
4.「在庫積み増し局面」:生産在庫率がプラス幅最大からゼロまで
1,2の局面では生産に下落圧力が、3,4の局面では上昇圧力が生じやすくなります。



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