大企業製造業DIは生産統計と強い相関

10月15日に発表される12月日銀短観の大企業製造業DIは、6月のプラス17から4ポイント改善のプラス26程度を予想します。予想通りになれば、5四半期連続の改善で、2004年9月のプラス26以来の高水準となります(T1参照)。2004年といえば、戦後最長となった「いざなみ景気」(73ケ月、2002年2月から2008年2月まで)の時期に当たります。

12月短観の改善を予想するのは、大企業製造業DIと相関が強い鉱工業生産が10-12月期は前期比改善が予想されるためです。11月、12月の生産指数はまだ発表されていませんが、経産省は、11月生産指数が前月比プラス2.8%、12月が同プラス3.5%と予想しています。

しかし過去12カ月の経産省の予想と実際の生産数値のギャップを見てみると、1カ月先の生産指数は、経産省予想を2ポイント程度下回っているので、とりあえず11月生産を前月比プラス0.8%程度と予想しました。同様に2カ月先の実際の生産指数は、経産省予想を0.5ポイント程度下回っているので、12月生産を前月比プラス3.0%と予想しておきます。

このように11月生産指数が前月比プラス0.8%、12月指数は同プラス3.0%と予想した場合、10-12月期の生産指数は104.6程度(2010年=100.0)と試算され、7-9月期の102.5から2%程度の上昇となります。生産が前期比で改善になると見込まれるので、生産指数と相関の強い日銀短観DIも改善と予想されます(C1参照)。

DIの改善幅ですが、4-6月期は生産が前期比2.1%増で、DIが同5ポイント改善でした。10-12月期も生産を同2%改善と予想したので、DIも5ポイントの伸びとしたいところです。しかし、7-9月期は生産がプラス0.4%と低い伸びだった割には、DIは5ポイント改善と大きく伸びました。7-9月期にDIが大きく伸びすぎた反動もあると判断して、10-12月期については4ポイント改善と、やや控えめに予想しておきます。

市場動向も短観DIの改善を示唆

大企業製造業に影響を与えそうな他の要因の四半期ごとの推移を見てみましょう。

短観DIへの影響は、生産指数ほど強くないとみられますが、為替については12月9日のレートは1米ドル=113.5円程度で、9月末の112.5から円安に振れています(C2参照)ので、企業マインドへはプラスの影響が予想されます。また足物の為替は、大企業製造業の2017年度の想定為替レート(9月短観では1米ドル=109.29円)より円安で推移しています。

 

株価については、8日の日経平均は22811円となり、9月末の20356円を上回っているので(C3参照)これも企業マインドにはプラスでしょう。ただ為替、株価という相場要因は日々変化しますので、企業が回答した時点の相場がどうであったかが、DIに影響することになります。

12月短観が示唆するもの

余談ですが、下のCxで、鉱工業生産と日銀短観DIのそれぞれのピークとボトムがほぼ一致している(グラフの枠内)ことが見て取れます。このピークとボトムが実は景気の山と谷に一致することが多いのです。直近の景気の山は12年3月、直近の谷は12年11月となっています。鉱工業生産、あるいは短観の大企業製造業DIの推移を見ていれば、足元の景気が山に近いのか/谷に近いのか、改善しているのか/悪化しているのかを大雑把に把握することができます。というわけで、鉱工業生産と短観DIは日銀が最も重要視する統計となっています。

尚、2014年に生産と短観DIがピークをつけ、2016年に両者はボトムをつけました。これが景気の山谷になる可能性はあったのですが、内閣府の専門家による細密な検討の結果、景気の山谷には認定されませんでした。

実際に12月の短観DIが改善すれば、2012年12月に始まった「アベノミクス景気」が少なくとも61カ月は継続していることが示唆され、戦後2番目に長い「いざなぎ景気」(57カ月:1965年11月—1970年7月)を超えたことが再確認されます。