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岸田文雄元外相の外交・安全保障政策についての発言が俄然注目を集めています。

岸田氏はインタビューやツイッターなどで菅総理に対し、16日に予定される日米首脳会談で台湾海峡の安全、香港の民主化、ウイグル族の人権問題などの対中国政策で米政府に協調行動を提案するように求めたとのことです。

また米、英、加、豪、ニュージーランドの5カ国からなる機密情報共有の枠組みであるファイブ・アイズへの参加を提唱、加えて敵基地攻撃能力の保有についての議論まで提唱したということです。

安倍晋三前総理からならともかく、岸田氏からこうした発言が出てくるとは、まさに晴天の霹靂です。というのは、こうした発言はこれまでの岸田氏とその派閥である宏池会の伝統的なハト派路線から大きく逸脱しているように見えるからです。

また宏池会と言えば、田中角栄総理とともに日中国交正常化を果たした大平正芳氏外相の派閥であり、自民党内でも親中的な派閥として知られています。岸田氏の発言は、これまでの親中路線からの決別を意味しているのでしょうか。

こうした岸田氏の発言については、今年中に行われる自民党総裁選挙で「ポスト菅」を狙って、党内保守派の支持を取り込もうという狙いがある―との見方が聞かれますが、その通りでしょう。

現在、国民の間では、尖閣での中国による侵犯行為が常態化しており、香港の民主主義は破壊され、ウイグルやチベットの人権問題も改善されず、台湾への中国の侵攻も緊迫の度を増しています。

こうした中、国民の8割近くが中国に親しみを感じない-という状況になっています。中国の最近の行動を見れば当然の結果と思えます。

またG7各国が中国のウイグル族に対するジェノサイドを非難し制裁を発表する中、日本だけが何のアクションもとらないでいることに、違和感を覚える国民も多いでしょう。

国会内で現在、超党派で中国への非難決議などをしようとの声が出ていますが、政府・与党からは不思議なくらいに、そうした声が出てきません。

それどころか自民党幹事長の二階俊博氏や公明党委員長の山口那津男氏は、今でも中国の「一帯一路」政策を賞賛する発言をしています。一帯一路と言えば、新興国に多額のカネを貸して、その返済が滞ると、その国のインフラを差し押さえるという、植民地主義的な政策として世界でも広く認識されている政策です。

こうした中、国民の多くは、中国に対する不満をどの政党も取り上げてくれないことに強い苛立ちの気持ちを持ったとしても不思議ではありません。

岸田氏の打ち出した新たな外交・安保路線は、そうした国民の不満の受け皿となりうるものであり、狙いとしては良い所を突いていると思います。

岸田氏の属する宏池会ですが、1960年からの22年間に池田隼人氏、大平正芳氏、鈴木善幸氏と3人の総理を輩出し、かつては名門派閥の名を欲しいままにしました。

ところが、その後は宮澤喜一氏(1991年11月-92年12月在任)以来、30年近く総理を出していないという事態に陥っています。

この30年の間、宏池会に有力な政治家がいなかったわけではありません。しかし加藤紘一氏は自らがおこした「加藤の乱」で自らチャンスを潰し、河野洋平氏や谷垣禎一氏は自民党総裁にはなりましたが、総理にはなれませんでした。

そのためか、宏池会に所属する議員数は党内で5番目に留まっています。岸田氏は自らが総理になることで、こうした派閥の停滞した状態をも打破したいと考えていることでしょう。

しかし、もし岸田氏が従来と変わらない政策を掲げて、次の選挙で敗れるようなことがあれば、派閥の領袖としての力量を問われることにもなりそうです。

宏池会はお公家集団で行動力がないと先に指摘しましたが、それでもかつて派閥内クーデターはありました。

1960年代、池田元総理の後に派閥の領袖となったのは前尾繁三郎氏でした。しかし閣僚人事で時の佐藤栄作総理にしてやられたことが発端となり、若手議員が蜂起、前尾氏を引きずりおろして、大平氏をリーダーに据えました。

岸田氏も同じような失敗を今年も繰り返せば、前尾氏と同じ運命に直面する可能性があります。小野寺五典氏や林芳正氏ら、岸田氏よりも若い有力な政治家が派内で出番を待っており、岸田氏がずっと同じ立場でいられるわけではありません。それだけに、今回の岸田氏の政策転換は一種の賭けと言えます。

加えて九星気学的にみても、今年は岸田氏にとってチャンスです。

岸田氏は1957年7月29日生まれですので、七赤金星という星になります。この星はカネに縁があり、ソフトバンクの孫正義氏や投資家のウォーレン・バフェットなど億万長者が多いのが特徴です。この七赤金星、今年は「強勢運」(勇気と信念でチャンスに恵まれる時期)と、非常に強運の年にあたります。

しかし来年になると「嬉楽運」(人脈を強化し足元を固める時期)に入ります。悪くありませんが、今年ほどの勢いはなくなります。その後の3年間は徐々に運気が低下する時期に入ります。ですので、できれば次回ではなく、今年の総裁選で決着をつけたいところでしょう。

岸田氏は昨年の選挙後に、宏池会の先輩である古賀誠氏を会の名簿から削除しました。義理堅い岸田氏にしては驚くべき行動です。

しかし、こうした行動は、岸田氏が今年の総裁選挙に背水の陣で臨むという決意の現れとも言えるでしょう。今後の岸田氏の動向に注目したいと思います。


七赤金星の人とは:1921年、1930年、1939年、1948年、1957年、1966年、1975年、1984年、1993年、2002年、2011年の各年の節分以後、翌年の節分の前日までに生まれた人。

※九星気学について


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