菅義偉内閣が始動しました。早速動き出したのが河野太郎行政改革担当相です。官邸で定例的に行われる新閣僚の順繰り会見について「前例主義の最たるもの。さっさとやめたらいい」と指摘。その後「行政改革目安箱(縦割り110番)」を立ち上げました。

「目安箱」とは、徳川幕府の八代将軍である吉宗が庶民の意見を聞くために設置したのがはじめですが、戦後、この目安箱が設置されたのは、今回が初めてではありません。河野大臣の令和目安箱は、1994年に発足した非自民政権の羽田孜総理が設置した「平成目安箱」に次ぐものです。

羽田内閣は、長期の自民党政権を倒して発足した細川内閣の後を継ぐ内閣でしたが、政策の違いから大所帯の社会党が抜けたために、少数与党となりました。その後のドタバタもあり、結局は在任期間64日と、憲政史上2番目の短命内閣となってしまいました。

この短命内閣の功績は何かと問われれば、政治に詳しい方でも答えに窮する人が多いと思います。長く続く自民党支配に短期間だけ風穴を開けた政治史上のあだ花という評価が多いかと思います。

しかし、当時も現在もほとんどマスコミにも取り上げられませんし、今となっては知る人もほとんどいないのですが、日本経済にけして小さくない功績を残しています。

それは大蔵省(今の財務相)が毎月発表する貿易統計の数字を「円建て」に一本化にしたことです。

羽田政権以前は、大蔵省は貿易統計を円ベースとドルベースの2本立てで発表していました。そして大手マスコミは円ベースでなく、ドルベースでの数字を報道するのが常だったのです。

当時も現在と同様に、円高は経済政策に携わる者にとって頭痛のタネでした。円高は長期的には輸出・貿易黒字を減少させます。しかし実際には、円ベースの輸出は比較的すみやかに減少するのですが、ドルベースでの輸出は長期契約の存在もあり、なかなか減少しない傾向がありました。

円高が進んでも、ドルベースでの輸出や黒字はあまり減少しないため「円高の効果が出ていない」として市場が過剰反応し、円高がさらに進む―という悪循環が生じていたのです。

つまり、内外の経済ファンダメンタルズとは無関係に、報道発表の方法という特殊な要因によって円高が引き起こされていた面があったのです。そのために輸出企業の収益が下押しされ、それに応じて景気が悪化する―という事態が見られました。

日本経済全体にとっては見過ごせない問題だと考えた民間エコノミストも少なくありませんでした。米国など当時の主要国をみても、自国以外の通貨で貿易統計を発表していたのは日本だけだったのです。

そこで私は平成目安箱に提案を送付しました。「貿易統計は今後、円ベースだけを公表し、ドルベースでの公表はやめて欲しい」という内容で、ドルベース報道がいかに円高是正にとってマイナスかも説明しました。

とは言っても、あまり多くを期待していたわけではありませんでした。政治においては意見だけ聴いて、その後のアクションは全くない-という事態が少なくありません。また「些細な技術的な問題」だとして無視される可能性も十分にありました。

しかし、ほどなくして、貿易統計は円ベースだけの発表となりました。おそらく、民間エコノミストや市場関係者からも同じ要望が多くあったのでしょう。

その時は、羽田総理とそのスタッフの眼力に敬服したものです。日本経済にとってのマイナス要因がとりあえず一つ取り除かれたのですから。

羽田氏は病気もあり2012年に政界を引退、17年に亡くなりました。総理を辞した後は目立った活躍は見られませんでしたが、この貿易統計の発表方法の変更は羽田政権の隠れた功績と私は考えています。

前置きが長くなりましたが、河野大臣の目安箱にも、こうした地味でも実効性のある成果を期待したいと思います。

ところで河野大臣は1963年1月10日生まれですので、九星気学では二黒土星という星になります。地味ながら着実に仕事をしていくという堅実な星です。日銀の黒田東彦総裁や中国の習近平主席が同じ星です。戦後の総理在任期間ベスト10では、6位の池田隼人元総理がこの星です。

この二黒土星、今年後半から来年にかけて要注意の時期に入っています。今年は「評価運」(努力の花が咲くが、後半が不安定な時期)となっています。最近も、総理の専管事項である衆議院の解散・総選挙の時期について「10月(になる)」という軽はずみな発言も見られました。

また来年は「停滞運」(不測の事態が多く、ツイていない時期)に入ります。九星気学での9年周期でも最も衰運の時期となります。健康、家庭、仕事、すべての面で要注意です。今後、特に注意すべきは今年11月と来年8月です。

河野氏は、過去数年の外相、防衛相としての活躍もあり、将来の総理の有力候補にも挙げられるようになりました。今年後半から来年一杯にかけての試練の時期を慎重に乗り切ってもらいたいと思います。

二黒土星の人とは:1917年、1926年、1935年、1944年、1953年、1962年、1971年、1980年、1989年、1998年、2007年、2016年の各年の節分以後、翌年の節分の前日までに生まれた人。

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