現在の日韓の政治関係は、1965年に日韓基本条約が結ばれて以来、最悪の状態にあるーとよくマスコミでも報道されています。その背景については、マスコミでも散々指摘されていますので、ここでは繰り返しません。

ただ、こうした両国関係の悪化が、いよいよ経済統計にも影響し始めてきたようです。

財務省は8日に5月の経常収支統計を発表しましたが、これによれば、日本から韓国への直接投資はネット(投資マイナス回収)で15億円にとどまりました。

この額を前年比でみると87.7%の大幅減少となります。また、対韓直接投資の、対アジア直接投資全体に占めるシェアも0.4%にとどまりました(C1参照)。

直接投資という統計は、C2を見ても分かる通り、月々の振れが非常に激しいのが特徴です。ですので、単月の動きだけで簡単に判断することはできません。

ただ過去1年ほどの月々のトレンドを見てみると、ある傾向が読み取れます。

まず対韓国ネット投資の前年比ですが、昨年の9月以後、9カ月連続で前年割れとなっています(C2の上の緑点線枠参照)。

2015年以後の統計をみても、これほど長期に渡って前年割れが続くのは初めてのことです。

また対アジア投資全体に占める割合をみても、去年11月以後は3%を割る低調な状況が続いています(C2の下の緑点線枠参照)。ちなみに2019暦年の数字は4.1%でした。

こうした統計から読み取れるのは、日本企業の対韓直接投資への警戒感です。

その背景としては、近い将来、日本製鉄など一部の日本企業の韓国における資産が売却されるのではないか、今後は自由な経済活動ができなくなるのではないか、戦闘を含む極度の緊張が朝鮮半島で生じるのではないか、こうした緊張の高まりもあって、韓国から資産流出が起きるのではないかーなどの要因が懸念材料として考えられます。

今後の注目としては、現在は投資が回収を上回るネット投資の状況が続いているが、今後は回収が投資を上回る状態(ネット回収)に転じていくのか否かーが注目されます。

また6月末に中国で国家安全法が可決されましたが、この影響で、対中国や対香港でも、対韓国と同様の警戒感が日本企業の間に出てくるのか否かーも今後の注目点でしょう。