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このところ市場で急激かつ重要な変化がありましたので、久しぶりに市場指標を見ていきたいと思います。その変化の主因となったのは、このほど成立した米国の追加経済対策です。

追加対策が1.9兆ドル(約200兆円、日本のGDPの40%程度に相当)と破格の大きさのために、米国の長期金利(10年物国債利回り)は3月12日時点で1.62%に上昇、週末ベースでみると、2020年1月25日の1.68%以来の高水準となりました。

巨額追加対策により、景気回復を通り越して、景気過熱や国債増発圧力への警戒感が生じたようにも見えます(C6参照)。

追加対策によるデフレ圧力の後退、インフレ圧力の顕在化も見られます。対策による景気回復期待に連動して、商品への需要も強まっています。

CRBインデックスは2週連続で193を超え、なんと2018年10月の195以来の高水準となりました。また米国の原油価格(WTI、ドル/バレル)も2週連続で65ドルを超え、これも18年10月の67ドル以来の高いものとなりました(C5参照)。

このように長期金利は急上昇していますが、それが景気の足かせ要因になるとの見方は少数のようです。長期金利上昇にも関わらず、米国株価は崩れることなく、史上最高値を更新し続けています(C1参照)。

ただ将来的には、高い金利が景気の懸念要因として意識されることもあるでしょう。その場合には、株価の下押し圧力が生じる可能性もあり、要注意です。

米国の長期金利の急上昇によって、日本の長期金利も上昇しており、ここ数週間は0.1%程度で推移しています。ただ米国の金利水準や上昇幅に比べるとずっと小さなものにとどまっています(C6参照)。

そのために日米の金利差(米国の10年国債利回りマイナス日本の10年国債利回り)は12日時点で1.51%ポイント程度に広がっています。この金利差は20年2月の1.53%ポイント以来の大きなものとなっています。

こうした日米金利差の拡大を反映して、為替も急激にドル高・円安に動いています。12日時点で1ドル=109円程度と、20年3月の110円台以来のドル高水準となりました(C3参照)。

一方、米ドルの急上昇を受けて、金相場は下落が続いています。金相場は1オンスあたり12日時点で1719ドル程度となっています。20年8月に一時2000ドルを超えた後は、下落傾向が見られます(C4参照)。米ドルと金価格の逆相関は継続しています。

さらに、米国2年国債と10年国債の利回り格差を週末ベースでみてみると、先週末は1.47%ポイント程度にまで拡大しました。これは少なくとも2018年以後では最大となっています(C7参照)。

過去の経験則からすれば、2年債の利回りが10年債のそれを上回ると、その約1年後に米国経済は景気後退に入ると言われています。

2019年8月にはこの金利差が一時ゼロ%ポイントとなり、景気失速が心配されましたが、現在はそうした懸念は払しょくされています。


米国の景気失速の懸念はほぼ無くなっており、逆にインフレ懸念が心配される状況です。今後については、米長期金利がどの程度まで上昇していくのか、金利上昇がいつ株価の下押し圧力として市場に認識されるのか―などが注目されます。

また、それ以上に要注意なのが、米国の急激な金利上昇により、新興国の資金が米国に流出する懸念です。米ドルと円については、既にドル高・円安という動きが見られています。

新興国から米国に資金が流出するという事態になれば、1997年に見られたアジア通貨危機再発の可能性もでてきます。アジア通貨危機時にはタイ、インドネシア、韓国が一時IMFの管理下に入りました。

新興国の危機は、その国の通貨、株価の下落で始まりますので、新興国の指標も今後要注意です。

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