自民党総裁選挙は下馬評の通りに菅義偉官房長官が制しました。伝統ある派閥である宏池会をバックに、有力候補とされてきた岸田文雄氏は敗れました。この敗北で、岸田氏の内閣総理大臣の芽も完全に潰えました。

安倍晋三総理は、後継者としてこれまで岸田氏を考えていたという話もありました。

しかし、麻生副総理とそりのあわない古賀誠元運輸大臣を岸田氏が切り捨てることができなかったことが要因で、安倍・麻生氏の支持を失ったとの見方も聞かれます。

もしその話が本当ならば、自らの空前のチャンスを目の前にして、8年も前に議員を引退した古賀氏に義理立てする岸田氏とは、よほど義理人情に篤い人なのか、よほど良い人なのでしょう。

今回、岸田氏が敗れたことで、宏池会は宮澤喜一氏(1991年11月-92年12月在任)以来、30年近く総理を出していないという事態となりました。

この要因ですが、まず「お公家さん集団」とも揶揄されるように、宏池会の戦闘力の無さですが挙げられます。

思い返せば、大平内閣も鈴木内閣も、田中角栄元総理が率いる戦闘力抜群の田中派のサポートなしには誕生しれえなかった内閣です。

しかし、かつての田中派の伝統を受け継ぐ竹下派も、往年の戦闘力はありませんし、今回の総裁選挙でも無難に菅支持でまとまりました。

また安倍総理は後任者について「情熱」の有無を重視していたという話もありますが、岸田氏にはそれがあまり感じられないのも気がかりです。

これまで実績を残してきた総理には、情熱をかたむけ得る大仕事がありました。

佐藤栄作元総理は高度成長と沖縄返還、田中氏は列島改造、大平氏と竹下登氏は消費税導入、中曽根康弘氏は行政改革、小泉純一郎氏は郵政民営化、安倍総理は憲法改正など。

しかし今の岸田氏にはそうした情熱を傾けるような課題が無いようにみえます。古賀氏を切り捨てられなかったことが示すように「誰とも(外国とも)喧嘩せず、無難にすます」ことが主要戦略であるかのようにすら見えます。

ところで岸田氏の属するのは宏池会という伝統ある派閥です。1960年から22年間に池田隼人氏、大平正芳氏、鈴木善幸氏と3人の総理を輩出し、名門派閥の名を欲しいままにしました。

しかし既に指摘したように、宮澤喜一氏以後、30年近く総理を出していません。

この30年の間、宏池会に有力な政治家がいなかったわけではありません。しかし加藤紘一氏は自らがおこした「加藤の乱」で自らチャンスを潰しました。

また河野洋平氏、谷垣禎一氏は自民党総裁にはなりましたが、総理にはなれませんでした。

かつて22年間に3人の総理を出した名門派閥が、直近の30年近く全く総理を出せない-、有力政治家がいても何故か総理になれない-。

「宏池会は何かに取り付かれているのではないか-」「呪われているのではないか-」と超自然的な力の作用すら想像してしまいます。

ところで、今回の総裁選挙に敗れた岸田氏と石破茂氏は、来年9月にも行われる時期総裁選挙に照準を合わせていると言われます。そうなれば、名門派閥のバックのある岸田氏が石破氏よりも有利かもしれません。

しかし、そう簡単にいくのでしょうか。確かに、菅内閣は安倍内閣の流れを受け継ぐものの、来年9月の総裁任期満了までの暫定内閣との見方が世間ではあります。

しかし、菅氏はそうした見方をはっきりと否定していますし、携帯電話料金引き下げなどの具体的な課題を既に明示しています。

かりに菅内閣が大きな失敗もなく、着々とやるべき仕事を遂行した場合には、来年9月以後も「続投」という可能性が十分にあるのではないでしょうか。

以前のブログでも紹介しましたが、菅氏は九星気学では七赤金星という星(岸田氏も石破氏も同じ)なのですが、来年は「強勢運」(勇気と信念でチャンスに恵まれる時期)という強運の時期に入ります。総理として、それなりの業績を残すことも十分に考えられます。

岸田氏、石破氏も同じ星なのでチャンスはありますが、現役総理がそれなりの成果を残して一定の評価を得れば、それを打ち倒すのは困難でしょう。

来年秋に菅氏が続投となれば「宏池会から総理を」という夢はさらに遠のきます。その場合、岸田氏が派閥の長を下ろされる可能性もあると見ます。

先ほどから、宏池会は戦闘力の無い公家集団と指摘してきましたが、過去を遡れば、時として決然とした行動も見られます。

1960年代、池田元総理の後に派閥の領袖となったのは前尾繁三郎氏でした。しかし、閣僚人事で時の佐藤栄作総理にしてやられたことが発端となり、若手議員が蜂起、前尾氏を引きずりおろして、大平氏をリーダーに据えました。

今回の総裁選挙で岸田氏は、得票数2位となり、石破氏のそれを上回り面目を保ちましたが、安閑としてはいられないでしょう。

宏池会から総理がでるのはいったいいつになるのか、宏池会の呪いはいつ解けるのか、注視していきたいと思います。

七赤金星の人とは:1921年、1930年、1939年、1948年、1957年、1966年、1975年、1984年、1993年、2002年、2011年の各年の節分以後、翌年の節分の前日までに生まれた人。

九星気学について