中国相場が世界同時株安再燃の引き金にも?

12日の日米株式市場では、株価が前日比で上昇、世界株価の下落連鎖が一服した形となりました。12日の米国株価上昇に加えて、為替も特段、円高が進んでいないことから、15日の日経平均株価は上昇が期待されます。

ただ何らかの要因から、世界同時株安が再発する可能性は否定できません。その引き金になりそうな要因のひとつが中国の通貨・株価の動向です。

先週末の人民元は1米ドル=6.922元まで下落しました。過去の月末ベースの相場と比較すると、2016年12月に付けた6.945元以来の人民元安となっています(C4参照)。

一方、株価を見ると、先週末の上海総合指数は2606となり、過去の月末ベースの株価と比較すると、2016年2月に付けた2687をやや下回りました(C5参照)。

こうした人民元・上海総合指数の下落の要因については、米国の利上げが継続するとの見通しに加え、米中の貿易問題を中心とする対立の激化が挙げられます。米国による中国批判は、経済・軍事問題だけにとどまらず、新疆ウイグル自治区の人権問題にまで広がりを見せています。

最近のこうした展開を見るにつけても、米国による中国共産党叩きは一時的なものではなく、本腰の入ったものと考えてよいと見ています(「今年の運勢:習近平中国主席、かつての強運はどこへ?」をご参照ください)。

上のグラフでも分かるように人民元、中国株価とも現在、非常に微妙なポジションにあります。今後、過去の下値を明確に割り込むことがあれば、それが世界同時株安再燃の引き金にもなり得るとみています。

ところで先週、もっとも興味を引いたのが、パキスタンの財務相がIMFに正式に支援を表明したとのニュースでした。パキスタンは政治・経済・軍事的に中国に非常に近く、中国から「一帯一路」プロジェクト向けに相当な額の貸付があると見られます。

しかしパキスタンがIMFの管理下に入ると、中国が債権放棄を求められる可能性もでてきます。「一帯一路」の新植民地主義的な面が露呈し、各国でプロジェクトを見直す機運が出てきている中、借金の焦げ付きは中国にとって打撃です。

それとも既に港湾や空港などの主要インフラを借金のかたに取っているので、借金焦げ付きの心配は無いのでしょうか。

米国の一人勝ち?

中国を追い詰める米国ですが、一時景気後退懸念が浮上しましが、そうした危惧も足元、やや後退しつつあります。

米国の2年国債と10年国債の利回り格差(10年国債の利回りマイナス2年国債の利回り)を週ベースでみてみると、今年2月上旬あたりまでは拡大しており、2月9日時点では0.78%ポイントと今年最大となりました。その後は、格差は徐々に縮小。8月25日時点では0.19%ポイントと今年最小となりました(C2参照)。

しかし、その後、利回り格差は再拡大。10月5日時点では0.35%ポイントにまで広がりました。先週末は格差がやや縮小しましたが、それでも0.31%ポイントと、0.3%ポイントを上回りました。

過去の経験則からすれば、2年債の金利が10年債のそれを上回ると、その約1年後に米国経済は景気後退に入ると言われています。利回り格差が今年最少となった8月後半時点では、景気後退への懸念が比較的強まっていたということです。

しかし足元の利回り格差の再拡大は、米国の景気後退懸念が薄らぎつつあることを示しています。米国経済の一人勝ちを象徴しているようにも見えます。