8月売上、7月よりも下落幅は縮小

大手百貨店各社の8月の売上高の伸び率が発表されています。そごう・西武が前年比0.4%減、伊勢丹三越が同4.8%増、JFR(大丸・松坂屋)が同2.7%増、高島屋が同0.9%増と、4社中3社で増加となりました(図1)。

4社は、増加の要因として、気温が高く夏物衣料が好調だったこと、堅調なインバウンド需要などを挙げています。

この4社の数字を用いて、回帰式(末尾参照)で8月の全国百貨店売上(今月21日発表予定)を予想してみると、前年比プラス0.4%と試算されます(7月の試算値はマイナス4.3%、図1参照)。

しかし、実際の発表数値と、回帰式による推定値の間にはC1を見ても分かるようにギャップがあります。例えば、7月の売上は回帰式では前年比マイナス4.3%と算出されましたが、実際の発表値はそれよりも1.8ポイント低いマイナス6.1%でした。

回帰式の予想は、このところ実際の発表数値を1.1ポイント程度上回っている(過去6カ月の平均)ので、その点を勘案すれば、発表される数字は前年比マイナス0.7%程度が予想されます。というわけで、Research76では8月の百貨店全体の売上を前年比マイナス0.7%と予想しておきます。

予想通りになれば、2カ月連続の前年割れですが、マイナス幅としては、7月のマイナス6.1%からは縮小となります。

インバウンド消費は伸び鈍化

7月までのデータを見る限り、インバウンド消費は依然として堅調ですが、一時の勢いに息切れ感がみられます。

百貨店協会によると、7月の外国人向け売上の百貨店売上全体に対するシェアは5.3%と、2カ月連続の6%割れで、昨年12月の4.0%以来の低水準となっています。

また外国人向け売上の伸びも7月は前年比プラス19.8%と、6月のプラス52.5%から鈍化、2017年2月のプラス9.6%以来の低い伸びと
なりました(C2参照)。

こうしたインバウンドの伸び鈍化は他の統計とも整合的です。日本での消費額が最も大きい中国からの8月の訪日客数は前年比プラス4.9%と、今年1月のプラス0.3%以来の低い伸びとなりました(C3参照)。

8月以後のインバウンド消費ですが、鈍化傾向が続きそうな状況です。中国人訪日客の購買力に影響のある人民元相場(対円)と上海総合株価をみてみると、ともに下落傾向が続いています。これはインバウンド消費にはマイナスの要因で、特に足元の株価は年初から2割程度下落しています。(C4参照)。

米国による対中貿易制裁と米連邦準備理事会(FRB)による強い利上げ圧力が強く影響していると見られます。

※回帰式
全国百貨店売上の前年比変化率の予想=0.16*「そごう西武の売上の前年比変化率」+0.093*「伊勢丹三越の売上の前年比」+0.163*「JFRの売上の前年比」+0.443*「高島屋の売上の前年比」-0.862