マイクとレニのスターン夫妻、それに高内春彦、ハイラム・ブロックと、4人のギタリストが2曲ずつスタンダートナンバーを弾くライブ盤。マイクやハイラムといった比較的新世代のギタリストがアコースティックでなく、ソリッドギターにエフェクターを使って弾くスタンダードは新鮮。

マイクを知ったのは、マイルスが6年ぶりにカムバックを果たした1981年。初めての印象はペンタトニックスケールしか弾けないロックギタリストだった。転調の多いジャズのスタンダード曲なんかとても弾けそうには見えなかった。

1975年に来日した時にマイルスグループにいたピート・コージーと比べても、全く物足りない。「どうしようもないイモ・ギター」「こんなギタリストを雇うとは、マイルスの眼力も衰えたな」、「こいつはマイルスバンドを解雇されたら、絶対にジャズ界では生き残れないな」と強く感じたものだ。おそらく当時のリスナーの多くがそう感じたはずだ。

ところがその後、マイクは奮起、練習の虫となり、今ではジャズギター界の第一人者の一人に登りつめた。今では私自身もマイクの弾くユニークなスタンダードを愛聴している。

こうしてみると、人生とは本当に分からないものだ。1981年当時は、自分の耳に相当に自信を持っていたつもりだった。しかし、マイクのその後の成長を見るにつけても、自分の見立てが間違っていたことは、残念ながら認めないわけにはいかない。

少し悔しくもあるが、それ以上に、ジョー・パスやジム・ホールらの巨匠とは一味違った、彼の新たな解釈によるスタンダード曲を聴けるのは嬉しい。