(生産統計は景気の動きが「見える」最強の経済指標)
2月鉱工業生産指数が発表されました。以前もご紹介したように生産統計は景気の方向感が最もはっきり「見える」指標です。この動きが下向きか・上向きかで、景気の方向感が分かります。2月生産までを示した下のグラフ(Cx参照)を見ても分かりますが、生産の山と谷が、景気の山谷とほぼ一致しています。

グラフのラインが下向きの時が景気後退期、上向きの時が拡張期にあたります。「景気は現在どういう状況にあるのか?」を手っ取り早く知りたい人には非常に便利な統計で、日銀短観とともに日銀が最も注目する指標でもあります。

グラフ内の矢印が示すように、2月の生産は前月比プラス4.1%と上昇しました(Cxの枠内)。しかし1月生産が大きく下げた(マイナス6.8%)後の戻りとしては弱めで、1-3月期生産は8四半期ぶりの前期比マイナスとなりそうです。

第1四半期のマイナスは景気後退に至らない?

生産指数は前月比プラス4.1%と、2カ月ぶりの上昇となりました。しかし1月が同マイナス6.8%と大きく下げた後の戻りとしては弱めでした。

一方、在庫指数は同プラス0.9%と、4カ月ぶりの上昇となりました。その結果、2月の生産指数と在庫指数の3カ月移動平均はともに、1月と同じ数値となりました(C1参照)。生産のトレンドとしては上昇基調を維持しており、経産省の「緩やかな持ち直し」との判断にほぼ沿っていると言えます。

経産省は3月、4月の生産指数がそれぞれ前月比プラス0.9%、同プラス5.2%になるとの予想も発表しました。Research76では、過去の経産省予測と実際の数値のギャップを勘案して、3月は前月比マイナス1.4%、4月は同プラス4.5%程度と予想します。

実際の数字がその予想通りになれば、1-3期の生産指数は101.6(2010年=100.0)となり、前期比マイナス2.6%(C2参照)と8四半期ぶりの低下となりそうです。四半期ベースの低下は久しぶりですが、これまで7四半期もの長期間にわたりプラスを維持してきたのですから、この程度の「調整」はごく自然のことで、先行きを悲観するのは時期尚早です。

では何四半期くらい連続で低下した場合に景気後退に入るのか? 過去の例をみてみると、2015年は、第2四半期、第3四半期と2四半期連続で低下しましたが、景気後退にはなっていません。その期間の生産の低下幅は4.4%程度でした。

また2012年は第2四半期から第4四半期まで3四半期連続で低下しましたが、この時は景気後退となりました(C2参照)。この期間の生産の低下幅は7.1%程度でした。

こうして過去の実績を見てみると、2008年のリーマンショックのような場合を除けば(該当期間の下落幅にもよりますが)大雑把な目安として3四半期連続の低下が無ければ、後退には至らないとみることもできます。

4月から始まる第2四半期の生産ですが、該当する四半期の最初の月の生産が比較的高い場合、その四半期の生産は前期比プラスを維持する傾向があります。4月生産は経産省予想が前月比プラス5.2%、R76予想がプラス4.5%と比較的高いので、第2四半期の生産はプラスとなる可能性が高いとみています。

実際に4-6月期生産がプラスになった場合、足元の景気拡大は(2012年12月に始まった「アベノミクス景気」)は今年6月までで67カ月となる可能性が強まります。戦後最長の「いざなみ景気」(73カ月:2002年2月―2008年2月)を超えるか否か‐今後の注目点となるでしょう。

ただ近々、生産統計の基準年の改定(2010年から2015年へ)、季節調整値の見直しなどがあります。その改定によっては、これまでの生産指数の動向が大きく変わる可能性があるので、注意が必要です。

3月日銀短観DIは2年ぶりの下落?

ここで4月2日に発表される日銀短観の大企業製造業DIを予想してみます。DIに影響を与えそうな要素(鉱工業生産、為替、株価)を見てみると、前四半期と比べて生産と株価は低下、為替は円高方向に推移しており、DIの下押しに働くことになります(T1参照)。

3要素のうち、特に短観DIへの影響が大きい生産とDIの関係を見たのがC3です。第1四半期の生産は前期比マイナス2.6%程度と、比較的大きな下落が予想されるので、3月短観のDIも、12月のプラス25から3ポイント下落のプラス22を予想としておきます(c3参照)。実際に3月DIが下落となれば、2016年3月以来、2年ぶりとなります。