中国むけ直接投資、2カ月連続2ケタ増

昨日は内閣府から4-6月期GDPの2次速報が発表されました。大方の民間エコノミスト、マスコミはその解説に注力していますので、こちらはちょっと視点を変えて財務省が発表した7月分国際収支を取り上げます。国際収支統計には経常収支を始めとして多くの数字が含まれているのですが、今回は中国向け直接投資を見てみます。

中国向け直接投資は2015年後半から16年いっぱいあたりまでは低調で、前年比でマイナスが続きました。しかし今年3月以後は前年比でプラスが定着、実額でも伸び率でも持ち直しが鮮明になってきました。特に6月は投資額が1350億円で前年比プラス53%となり、7月も21%増と2ケタ増加が続いています。

ここでも共産党大会の影

さて、この中国向け直接投資の持ち直しを支えている要因は?と考えてみると、まず挙げられるのは景気の持ち直しです。GDP伸び率を見ると、2015年から16年にかけて伸び率が徐々に低下、一時前年比でプラス6.7%まで鈍化しました。しかしその後は伸び率が回復、最近はプラス6.9%まで高まり、年全体でも、政府の目標であるプラス6.5%を楽に超えそうな勢いです(C1参照)。


もう一つの要素として通貨(人民元)の安定が挙げられます(C2参照)。人民元は2015年半ばには対円で20円まで上昇しましたが、その後徐々に元安/円高が進み、16年9月には15.1円まで売られました。それに呼応するように直接投資(グラフは3カ月移動平均)は急速に低下。しかしその後、人民元は持ち直し、最近は16円台で安定的に推移しています。それに伴い、徐々に投資額も回復してきています(逆に投資が増えたので、人民元が持ち直して安定してきたという側面もあるでしょう)。

これまで発表された中国のPMIなどから予想すれば、7-9月期GDPも4-6月期(プラス6.9%)と同程度か、それを上回る数字が予想されます。では、この景気の強さ、通貨の安定をもたらしているものは何かと言えば、10月18日に予定されている5年に1度の共産党大会が挙げられます。

景気点検:インバウンド消費回復へ、中国共産党大会も寄与でも指摘しましたが、共産党大会で習近平主席の偉業を讃えるために現在、かなり無理な景気下支え・規制強化も行われています。ですので、少なくとも大会までは景気・通貨も安定して、直接投資の堅調さが維持されると見られます。

しかしこうした状態が今後も長く維持されるかと言えば疑問です。大会が終わって、無理な政策・規制が徐々に撤廃されると、景気・通貨ともに再び不安定化する可能性があり、直接投資も鈍化に転じることも考えられます。

共産党大会後は景気状況、市場の景色が大きく変わる可能性もあり、今後とも景気指標や市場動向を注視したいと思います。