「底入れ」だって?

経済紙を見ていたら「マンション底入れの兆し」という見出しが出ていました。「え、本当?」と思わず思って読むと「マンション市況に底入れの兆しが出ている」ということです。この市況という言葉、非常にあいまいなのですが、もしこれが価格という意味であれば、とんでもない話だと思います。

この記事に触発されて久しぶりに首都圏マンション統計を見てみたのですが「マンション価格は向こう数年でまだまだ下がる」という1月時点の見方を変える必要がないことを確認しました。

まず6月の発売戸数ですが、2284戸で前年比25.1%減、2カ月連続のマイナスとなります。また契約率ですが67.2%と、2カ月ぶりに好不調の分かれ目である70%を割り込みました。ここ数年の発売戸数、契約率(ともに3カ月移動平均)を見ると、ともに下落基調が続いていました。しかし最近は、発売戸数をデベロッパーが絞っていることが功を奏してか、契約率は安定してきました(C1参照)。3カ月移動平均ベースの契約率は3月の65.4%から徐々に上昇、6月は68.6%まで上がっています。

一方、一戸あたりのマンション価格ですが、6月は5642万円となりました。3カ月移動平均での6月価格は5847万円となっています。昨年12月に5215万円まで落ちたのですが、その後再び上昇基調に入っています(C2参照)。

マンション価格の年収倍率は依然高水準

一見好調な数字が並びますが、一戸当たり価格が高くなり過ぎているのが問題です。首都圏マンション価格は不動産バブル崩壊後大きく低下しましたが、2000年代前半に底入れしてその後は上昇に転じています。特に東京オリンピック開催が決定した後は、施工費の高騰から、価格上昇のペースが加速しています(C3参照、黄色の矢印)。

2016年の首都圏マンションは5490万円となっています。一方、東京の勤労者の平均年収ですが、バブル崩壊後、緩やかな低下基調にあります。2016年は726.6万円で、景気回復もあり前年比で増加しました(C3参照)。

ここで、マンション価格が都民の平均年収の何倍か–を年ベースを見てみると、2016年は7.56倍となり、15年の8.0倍から低下しました。低下は4年ぶりです(C4参照。バブル経済のピークだった1990年は8.35倍)。

2017年の年収倍率ですが、平均年収が16年と同じと仮定して、6月のマンション価格である5642万円を使って試算すると、7.76倍となり、2016年の数字を上回ることになります。

ただC4をみても分かりますが、年収との比較でみたマンション価格は依然高すぎると考えています。購入できる不動産価格のメドは一般に年収の5倍と言われます。首都圏は日本の全人口の1割以上が集まる特殊な地域ということもあり、1980年代後半のバブル経済以後も5倍を下回ったことはありません。それでも8倍近くともなると、庶民には手が届きません。

1980年から2016年までの年収倍率の平均は6.07倍でした。とすれば、2016年の水準(7.56倍)から、まだ下落余地があります。さらに米国やEUの金利上昇もあり、このところ金利が上昇しています。住宅ローン金利も上昇してくる可能性があり、そうなれば首都圏マンション価格下落を加速するでしょう(C5参照)。よほど資金に余裕のある方を除いて、現時点でのマンション購入には慎重を期して頂きたいと思います。高値掴みになる可能性があります。

尚、このブログは、マンションの購入について特定の行動を推奨するものではありません。購入等の決定はご自身の判断でお願いします。